
✽この記事は6巻のネタバレを含みます。未読の方は要注意⚠️
「早く忘れちゃいたいのに、何で聴きたくなっちゃうんだろう」
高校2年の冬。
周囲が進路を考え始めるなか、ゆかりは「予備校に通う」という理由で、優助との勉強会を解散することを決める。
未遂に終わった告白。
自分を置いて春雪を追いかけた優助——ゆかりはそれらを“なかったこと”にするように、受験勉強へと気持ちを切り替えようとする。
一方、優助はゆかりの想いに気づかないまま、将来のビジョンを描けない自分に焦り始めていて……。
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「スタジオカバナ」7巻ネタバレ感想
“恋が、同時に前に進めなかった巻”
7巻は読んでいて本当に苦しい。
誰も嘘をついていない。
誰も悪意を持っていない。
でも、全部が噛み合っていない。
この巻は、
- ゆかりは「終わった」と思っている
- 優助は「始まっている」とすら気づいていない
この“認識のズレ”が、物語全体を覆っています。
■「振られたと思っている」ゆかりの距離感が切なすぎる
優助に振られたと思い込んでいるゆかり。学校ではどこかぎこちなく、自然と距離を取ろうとする。
優助はその理由に気づいていない。
でも、
「何かが違う」
という違和感だけは、確かに感じている。
このすれ違いが本当にリアル。
恋って、気持ちがズレた瞬間に説明なしで壊れていくんですよね。
■ バンド活動休止=優助の“逃げ場”がなくなる
ギターとドラムが抜け、優助のバンドは活動休止に。
みつるの問い。
「休止なんだよね。バンド、続けるんだよね?」
この問いに、優助は答えられない。
音楽が嫌いになったわけじゃない。
でも、
- これで生きていく覚悟
- 将来のビジョン
- 自分は何者になりたいのか
何一つ、言葉にできない。
一方で、みつるははっきり言う。
「俺、ミュージシャンになる」
この差が残酷。
■ 勉強会の解散——ゆかりが「未来」を選んだ瞬間
学校で告げられる、勉強会の解散。
ゆかりに「予備校に行くから」「バイトがあるから無理だよね」と言われてしまう。
ここ、ものすごく大事なシーン。
ゆかりは、恋よりも“自分の進路”を選んだ。
それは逃げじゃない。
自分を守るための、前向きな選択。
みつるも、ゆかりも、
少しずつ未来へ進んでいる。
だからこそ、立ち止まっている優助の焦りが浮き彫りになる。
■ えりなの違和感は、読者の違和感
えりなだけは感じている。
「これ、勘違いなんじゃない?」
優助の態度を見ていると、どう考えても“振った側”には見えない。
えりなの視点は、完全に読者目線。
この物語の残酷さは、真実を知っているのが“当事者じゃない人”だけなこと。
■ 嫉妬はもう、無自覚じゃない
塾に通い始めた優助。
そこでまた、みつると再会する。
そして見てしまう。
ゆかりが他の男子と仲良さそうに話している姿を。
——嫉妬する。
ここで重要なのは、優助がその感情を否定していないこと。
さらに、クリスマスイブ。
ゆかりが誘われているのを見て、反射的に手を引き連れ出す。
でも、すぐにバイトへ向かわないといけない優助。
その背中を見て、ゆかりはまた誤解する。
「イブだし、他に予定あるよね……」
すれ違いが、またひとつ増える。
■ みつるという存在が、優助の“次”を示し始める
7巻後半、物語の空気が少し変わる。
cabanaでのバイト中。
お客がいない時間に、みつるとセッション。
それが、あまりにも心地いい。
みつるの言葉。
「優助のバンドのギター、やらせてほしい」
「優助となら、やりたい音楽ができる気がする」
ここは、7巻最大の希望。
- 優助を“利用”しない
- 対等な関係
- 音楽を一緒に楽しもうとする姿勢
やっと、健全な音楽の関係性が現れた。
「スタジオカバナ」7巻のテーマ
- 恋は、想いだけでは続かない
- 進路は、誰かを待ってくれない
- すれ違いは、悪意より沈黙から生まれる
- 立ち止まる人と、進む人の残酷な差
7巻は、「選べなかった優助」が一番苦しい巻。
「スタジオカバナ」心の学び
人は、相手の気持ちを知らないとき、一番つらい結論を自分で選んでしまう。
ゆかりが距離を取ったのは、
恋を諦めたからじゃない。
前に進めたからでもない。
「私はもう選ばれていない」
そう信じてしまったから。
言葉にしなかった想いは、沈黙のまま、
誤解という形で心に残っていく。
7巻は、
“好き”を伝えなかったことで起きる
静かな悲劇を描いた巻だ。
「スタジオカバナ」まとめ:7巻は「すれ違いの極致」と「次の光」が同時に描かれる巻
- ゆかりは前に進もうとしている
- 優助はようやく焦り始めた
- みつるが、新しい可能性を示した
7巻は停滞の巻であり、8巻へ向かうための“溜め”の巻。
ここから、物語は確実に動き出します。
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