
✽ここからの内容はネタバレを含みます!ネタバレを望まない方は要注意⚠️
四谷隼人は、最初から「選ばれる側」に立っていた人物ではありません。
妹として育った少女を、誰よりも大切に思っていたけれど、その感情が恋なのかどうか。彼自身が、それをはっきりさせることはありませんでした。
想いは確かにある。でも、それをどう扱うかは、ずっと自分で選び続けていた。それが、この物語における四谷隼人の立場です。
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✅ 「僕らの好きはわりきれない」あらすじ・見どころ
「僕らの好きはわりきれない」四谷隼人:腕をつかんで引っ張り上げる――それが、彼の愛のかたち
唯が不安を吐き出したとき、隼人はこう言います。
「腕つかんで引っ張り上げる。それでも無理で落ちていったら、その時は一緒に落ちてやる」
ここには、恋の駆け引きはありません。自分を選んでほしい、という願いもない。
ただ、壊れそうなときに、必ずそばに立つ。それだけを、迷いなく選んでいます。
好かれようとしない。期待も、圧も、かけない。この一線を、隼人は最後まで崩しませんでした。
「僕らの好きはわりきれない」四谷隼人:兄になった瞬間は、ずっと手前にある
幼い頃の隼人と唯の関係に、恋や欲望はまだありません。ただ「一緒にいたい」という、素朴な感情だけがありました。
印象的なのは、唯と暮らしていた母が倒れ、混乱の中で、唯が隼人に電話をかけた、あの夜です。
頼られたことへの嬉しさと、同時に湧き上がった「安心させなきゃ」という気持ち。このとき、隼人の主語は、自分から、唯へと移っています。ここで彼は、兄であることを、役割として引き受けたのだと思います。
「僕らの好きはわりきれない」四谷隼人:抱きしめる。でも、その先には・・・たぶん
もし唯が泣いていたら。隼人は、きっと抱きしめると思います。それは迷いのない行動です。一人にしないため。不安を和らげるため。そこから先へ進むかどうか、進みたいかどうかは、作中では描かれてはいません。
ただ、これまでの隼人を見ていると、そこで踏みとどまる人だったのではないか、そんな気がします。
キスをすることも、慰めを理由に、境界線を越えることも、たぶん、選ばなかったと思います。その瞬間の救いよりも、そのあと、唯が自分を責めてしまう時間を、背負わせたくなかったから。家族への後ろめたさや、自分を責めてしまう気持ちを、唯に残したくなかったから。
だから隼人は、一歩手前で立ち止まる人なんだと思います。
「僕らの好きはわりきれない」四谷隼人:恋にしなかった、という選択
隼人の感情は、もしかしたら「恋」だったのかもしれません。けれど彼は、その想いを、恋として扱いませんでした。欲しいとも言わない。選ばれたいとも言わない。期待も、束縛も、しない。
恋にしてしまえば、踏み込む理由も、独占する免罪符も、手に入ったはずです。
それでも彼は、そうしませんでした。
唯の人生の主語を、自分にしないために。
「僕らの好きはわりきれない」四谷隼人:唯が、自分の目の届かない道を選んだとき
唯と律が付き合うことになっても、隼人は「奪われた」とは感じません。そこにあるのは、嫉妬ではなく、ただ一つの心配でした。
唯が泣くことにならないか。後悔しないか。自分を責めてしまわないか。
彼は、選ばれなかったのではありません。最初から、選ばれる場所に立とうとしなかったのです。
個人的にとても印象的だったシーンがあります。それは自分は大学生になり唯の元から離れて暮らすことになり、唯のそばには律がいる。その律に、自分(隼人)の存在を脅威とし「不安がれ」と言い放つ場面があります。それは意地悪ではなく「油断することなく唯を守れ」という意味でした。
自分がそばにいない時間も、唯を守る相手の尻をたたくところは「隼人らしさ」が反映されていて納得でした。
「僕らの好きはわりきれない」四谷隼人:「俺の全て」という言葉に、名前はいらない
番外編で、隼人は唯を「俺の全て」と表現します。
それが恋なのか。家族愛なのか。情愛なのか。彼は、決めません。名前をつけてしまえば、その形に、縛られてしまうから。
唯が望むなら、兄として支える。もし望むなら、別の形で隣に立つ。
どんな立場でも、唯の幸せを最優先にする。
それだけが、彼の中で揺るがないものです。
「僕らの好きはわりきれない」四谷隼人という在り方
四谷隼人は、感情を持たなかった人ではありません。むしろ、誰よりも深く抱えていました。
それでも彼は、その感情を理由に、誰かを傷つけることをしなかった。
恋に回収されなかった想いを、静かに抱えたまま、最後まで立場を崩さなかった。
これを、どう受け取るかは、読む人に委ねたいと思います。
ただ一つ、確かなのは――四谷隼人は、自分の気持ちより、誰かの人生を優先し続けた人だった、ということです。それが、この物語で彼が立っていた位置だったのだと思います。
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