
✽ここからの内容はネタバレを含みます!ネタバレを望まない方は要注意⚠️
リヒトは、この物語の中で主役になろうと思えば、いくらでもなれた人物です。
人気アーティストとしての実績があり、音楽の世界では確かな立場を持っています。そして何より、ひばりの幼なじみという距離にいた人。
正しい言葉も、現実的な未来も、提示できる場所に立っていました。それでも彼は、その立場を振りかざすことはしなかった・・・。
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「むせるくらいの愛をあげる」リヒト:ひばりの前で主役にならなかった距離
リヒトは、ひばりの前で自らの力を利用し、無理に前に出ることを選びませんでした。正しい言葉で説得することも、想いを武器に奪いに行くこともしませんでした。
もし彼が、ひばりの人生の舵を取る立場として踏み込んでいたなら、また違ったストーリーになっていたんだと思います。でも彼は、その位置に立ちませんでした。ただしそれは、ひばりに関わらなかった、という意味ではありません。
芸祭のステージ直前。ガクがピックを失くし、ひばりが咄嗟にそれを投げ渡した瞬間、場の空気は一変しました。
視線が集まり、ひばりが矢面に立たされる・・・。そのときリヒトは、説明もしなければ、代弁もしない。ただ、ひばりを抱き寄せ、その身をもって守ったのです。
次の瞬間、それを見たガクがステージから飛び降りて、感情のままに、リヒトの腕を掴みます。そのことに対してリヒトは、ガクに強い言葉を使います。
「冷静に考えろ、ガキが」
それは、ひばりを巡る感情に向けた言葉ではなく、自分の立場を考えられないガクへの苛立ちでした。
そして、ガクたちのデビューが現実になろうとする頃、リヒトはひばりの家を出ます。去り際、ひばりに残したのは、「覚悟はできてる?」という言葉でした。
未来を語ることはしない。答えも置いていかない。ただ、これから起きる現実だけを伝え、彼は一歩引いた場所に戻っていく。主役にはならない。それでも、ひばりが無防備なまま立たされることだけは、決して許しませんでした。
「むせるくらいの愛をあげる」リヒト:ガクの前では引くことを選ばなかった
ひばりの前では立たなかったリヒトでしたが、ガクの前では、引くことを選びませんでした。
ガクは、恋のライバル。ひばりを巡る感情が、まったくなかったわけではないはず。それでもリヒトは、感情を理由にガクを否定しない。奪い合いに持ち込むことも、優位に立とうとすることもしませんでした。
音楽の場では、あくまでもプロとして接し、甘い言葉は使わず、必要なことだけを、必要な距離で伝えます。
芸祭のあの場面でも、リヒトはガクを止めました。感情のまま前に出ようとする彼を、強い言葉で制したのです。それは、見下したからでも、支配したからでもない。場を壊さないため。そして、ガク自身が背負わなくていいものを、背負わせないための一線でした。
ライバルでありながら、敵にはならない。感情と役割を切り分けたまま、同じ場所に立つ姿勢を崩しませんでした。
「むせるくらいの愛をあげる」リヒト:出るべき場所には立った
一方で、場が崩れかけた瞬間、リヒトは自ら行動に出ます。
京平不在のライブ。迷いが生じる状況。そこで彼は、代役としてステージに立ち、現実を突きつけました。
甘い励ましではなく、プロとしての言葉を選び、責任を引き受ける立場に立つ。ここでは、引くことなく、出るべき場所を、見誤らなかったのです。
「むせるくらいの愛をあげる」リヒト:同じリヒトだが状況に応じて違う場所に立っていた
ひばりの前では、主役にならなかった。
ガクの前では、引かなかった。
バンドの前では、責任を引き受けた。
同じ人物が、場面ごとに違う選択をしているのです。
それが正しかったのか、報われたのか。その答えは、物語の中では示されない。ただ、主役にならなかった場所と、立つことを選んだ場所が、同じ人の中にありました。その事実だけが、静かに残っています。
※本作は現在も連載中です。リヒトがこれから、どの場所に立つのか。あるいは、立たないのか。その選択も含めて、見届けていきたいと思います。
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